【2-6】M.ハイデガー『芸術作品の根源』第2章 作品と真理(2)
Description
哲学ポッドキャスト・テツアンドガクは身近なテーマを哲学的に考察してみる番組です。
脱線はしますが基本的には伝統的な哲学の概念やテキストを軸に議論しています。
【前回からの続き】
・ハイデガーによると芸術作品は「世界」と「大地」を立ち上げる力を持つという。
・前回はその「世界」の概念についての説明回でしたが、今回は続けて「大地」の概念について話しています。
◆ハイデガーの言う「大地」とは?
・作品は「素材」=声、言葉、色・・・等から作られる
・ヘアシュテレン(herstellen 独「制作する」)という言葉は?
「この素材を特徴づけてみる」her=こちらへ stellen=立てる という意味合いをもつ。
・じゃあ「何を、こちらへ、立てるの?」ということを考えてみよう。
◆道具と芸術作品との対比
・道具にも芸術作品にも、材料となる素材がある。
・道具で使われている素材は消耗・劣化していき、その存在を人が特に意識することはない。
・芸術作品の素材は、その素材こそが表れてくるようになる
・例えば神殿という作品ができることにより、素材である岩の存在が人に意識されるようになる。
・このような働きをハイデガーは「大地をこちらに立てること(herstellen)と表現する。
・素材から何かが作られるのではなく、「大地」という存在をこちら側へ立てるという構造になるのが芸術作品。
・作品がなければその「大地」の存在を我々が意識することはない。
・「世界をアウフシュテレンする(aufstellen 独「建てる」)」と対になるものとして「大地をヘアシュテレンする(herstellen)」という概念になっていることが芸術作品の本質だとハイデガーは言う。
・世界はそもそも開こうとする動向をもち、大地は隠れようとする動向を持つという形で表現される。
◆ハイデガーの真理感
・「何かと何かが一致する」という概念ではなく「隠れた状態から何かが露わになる」という真理感で話している。
・ここまでハイデガー流の説明でいう「世界」と「大地」の概念から今度は「アレーテイア(真理)」の話が展開されていく…
◆謎が解決した(説明された)と思ったら、次の謎(「真理」)へ。次回へ続く。
脱線トーク
・「基底材を猛り狂わせる」(デリダ)・・・タイトルが最高な哲学書のランキングがあってもいいかも。
・哲学の本を読む楽しみ方・・・真理や結論を求めて読む読書もあるが、普段とは異なる視点や思考体験をしていく読書体験もある。ハイデガーは意外性のある発想がある人。
・現代哲学・・・問いを明確に立ててそれを検証していくスタイルの論文も多い。ある制限の中で問いや領域を設定、検証をすることで、明確にできる問いもある。